債務名義とは、債務者が債権者に対して金銭等の支払いを強制的に実行させるために必要な公的文書です。これは、債権者が強制執行を行う際の法的根拠となります。具体的には、債務名義は債務者に対する請求権の存在とその範囲を公証するものであり、強制執行の手続きを進めるために不可欠です。
具体的な条文
債務名義に関する規定は主に民事執行法第22条に記載されています。この条文では、債務名義となる文書の種類が明示されています。
債務名義の種類
以下は、民事執行法第22条に基づく代表的な債務名義の種類です[1][3][5]:
- 確定判決:裁判所での訴訟により確定した判決。
- 仮執行宣言付判決:判決確定前に仮に執行力を持たせた判決。
- 和解調書:裁判所での和解によって作成された調書。
- 調停調書:調停手続きで合意に至った内容を記載した調書。
- 執行証書(強制執行認諾文言付公正証書):公証人が作成する文書で、強制執行を認める内容が記載されたもの。
- 仮執行宣言付支払督促:支払督促に仮執行力を付与したもの。
具体例
例1:確定判決
例えば、AさんがBさんに対して100万円の貸金を返済しないため、Aさんが裁判所に訴訟を起こし、裁判所が「BさんはAさんに対して100万円を支払え」とする確定判決を下した場合、この判決は債務名義となります。Aさんはこの確定判決を基に、Bさんの財産に対して強制執行を申し立てることができます[1][3][5]。
例2:執行証書
CさんがDさんに対して賃貸借契約の家賃未払いがある場合、CさんとDさんが公証役場で「DさんはCさんに対して未払い家賃を支払う」という内容の執行証書を作成したとします。この執行証書も債務名義となり、CさんはDさんの財産に対して強制執行を行うことができます[5][8]。
強制執行の手続き
強制執行を行うためには、以下の手続きを踏む必要があります[1][6][8]:
- 債務名義の取得:裁判所や公証役場で債務名義を取得します。
- 執行文の付与:必要に応じて、債務名義に執行文を付与してもらいます。
- 強制執行の申立て:裁判所に強制執行の申立てを行います。
- 差押命令の送達:裁判所から差押命令が送達されます。
- 取立て:差し押さえた財産から債権を回収します。
これらの手続きを経ることで、債権者は法律に基づいて債務者の財産から強制的に債権を回収することができます。